今日の月を家族と眺めた秋の夜、スマホを置いて夜空を見上げた話
夕食の食器を片づけ終えて、ゴミ袋を持って外に出ると、東の空に月がぽっかり浮かんでいた。
思わず足を止めて見上げた私は、ポケットからスマホを出して一枚撮ろうとした。
ところが画面の中の月は、白い点のようにしか写らなかった。
実物の明るさとは、まるで違って見えた。
「ああ、こういうことか」と苦笑いしていると、玄関のドアが開いて美幸が顔を出した。
「お父さん、ゴミ捨てるだけなのに、なんで突っ立ってるの」
美幸は中学生らしい冷静な口調で言ったが、私が空を指さすと、靴を引っかけて隣に並んだ。
少しして和也も出てきた。
里美もエプロン姿のまま、洗い物の途中だったという手を拭きながら玄関先に顔を出した。
「あら、きれい」と里美が言うと、和也は「月ってこんなに明るかったっけ」とつぶやいて、スマホを見ずに空を見ていた。
寒くなってきたので、里美が温かいお茶を淹れてきてくれた。
湯呑みを手に、家族四人で月を眺める時間は、ほんの数分だったと思う。
それなのに、なぜか話が途切れなかった。
美幸が「月の模様がうさぎに見えるって、本当にそう思う?」と聞くと、和也が「餅をついてるみたいだよ」と返し、里美が声を上げて笑った。
私も子どもの頃の話を少ししたが、言いながら、どこまで正確に覚えているのか自信がなかった。
そんな話でも、家族は楽しそうに聞いてくれた。
先日の秋の夕方に里美と歩いた道でも、空の色の移り変わりを眺めながら、同じように何気ない話をしたことを思い出した。
撮ったスマホの写真は、結局ぶれていた。
それでも、月明かりに照らされた家族の横顔は、写真よりもずっと鮮やかに見えた気がした。
一人で空を見上げるのも悪くないが、誰かと同じ方向を見ると、同じ景色がほんの少し違って見えるものだと感じた。
今夜は写真を消して、見上げた時間だけを手元に残すことにした。
次に月を見るときは、まず目で見ることを大事にしたい。
読んでくださり、ありがとうございます。
今夜、ふと空を見上げる時間があったら、少しだけ立ち止まってみてください。

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